DIARY 日記・エッセイ

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2008年11月30日

[ お知らせ ]

野口悦男さんのご冥福をお祈りします。

野口悦男さん.JPG
温泉ファンなら誰もが知る野口悦男さんが
享年60歳という若さでこの世を去りました。

11月23日 午後4時43分に永眠されたそうです。

私は、アイスランドから帰国して
成田空港で携帯の電源を入れると、
ある温泉評論家の方からメールが入っていて知りました。
「山崎さん、野口さんが亡くなったの知ってる?」

……、
信じられませんでした。
「えー、冗談でしょうー。あの野口さんがーーー?」
と思いました。
でも、本当の話でした……。


昨夜がお通夜、今日は告別式。

私は、旅の仕事を延期してでも、
どうしてもお別れを言いたくて、
今日、告別式に参列してきました。

野口さんといえば「秘湯」の素晴らしさを伝える第一人者。そして「源泉かけ流し」という造語を作られた事で知られる方。近年では「日本温泉遺産を守る会」を立ち上げ、次世代への温泉を継承しようと力を尽くされていました。

実は、面識はたったの1度。ある雑誌の対談の仕事でした。野口さんといえば、筋骨隆々な強面な方というイメージでしたから戦々恐々としてお会いしたのですが、本当にお優しい方で、私をとても気遣って下さり、正直、びっくりしたことと嬉しかったのを昨日のことのように覚えています。

対談後、対談会場を後にして、お酒をご一緒させて頂きました。美味しそうにお酒を飲みながら「僕はね、山崎さんの本を読んだことがないんだよ、ごめんね。僕ね、人の本を読むと、どうしても自分が書く時に真似てしまいそうで、一切、読まないことにしているんだよ」と、おっしゃっていました。

私が温泉を紹介する仕事を始めた10年前、今ほど温泉紹介本がなく、野口さんご自身が入浴され、解説を書かれているのが新鮮で、私はたくさんの野口さんの著書を買い込みました。まだ温泉について何の知識も経験もなかったので、野口さんの本を読んで秘湯を知ったし、温泉のことを知っていったし、次はどこへ行こうと野口さんに憧れたものです。だから野口さんの“人を真似るといけないから、人の本は読まない”といった仕事に対するプライドを見て、また野口ファンになったのです。

余談ですが、告別式にたくさんのお花が飾られていましたが、中に、作家の山本一力さんのお花もありました。以前、一力さんのエッセイで「僕が執筆でぼろぼろになっていた時、野口さんの本を読んで、突然、温泉に出かけました。僕に温泉を教えてくれたのが野口さんでした」(記憶が曖昧で正確な文書ではないですが、こんな内容でした)と書かれていました。一力さんのエッセイを読んだとき、一力さんは野口さんの仕事に対する誇りを読み取ったのだろうなと感じました。

今日の告別式には日本秘湯を守る会の会長の大丸あすなろ荘の佐藤さんや乳頭温泉郷鶴の湯の佐藤さん、新穂高温泉郷槍見館の林さんらの多くの温泉関係者が参列されていました。弔辞は大丸あすなろ荘の佐藤さんが述べられ、悦ちゃんという愛称で呼ばせてもらったいたこと、「この頃の温泉宿が元気がないんだよー、どうしたら元気になるかなー」などと温泉を案じられていた生前の野口さんの姿を語ってくださいました。

そして奥様からは、とても優しい方だったこと、家では愛犬とじゃれることが一番の楽しみにされていたことなどのお話がありました。

祭壇に飾られていた写真には、
満面の笑みで温泉に浸かるあの元気な野口さんの姿がありました。

野口さんの偉業を受け継ぎたいといった大きなことは決して言えません。
けれども、「志は受け継ぎたいと思っています」と、
今日、野口さんに誓ってきました。

ご冥福をお祈りします。
そして温泉に対する多大なる功労に
心より感謝を致します。

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